【ワット・プラシン】チェンマイの守護仏を祀る王室寺院|在住10年が歴史を詳しく解説

多くの寺院が点在するチェンマイの中でも、ひときわ格式の高さで知られるのがワット・プラシン。

1345年に建立され、タイ全土でも数少ない王室第一級寺院として今も信仰を集めています。

ウィハーン・ライカムに祀られるヒシン仏(プラ・シン)は、チェンマイの守護仏のひとつとして知られ、毎年ソンクラーン(タイ正月)のご開帳で神輿にのせられ街を練り歩きます。

境内には十二支仏塔もあり、辰年生まれの人が参拝すると特に大きなご利益が授かれると信じられています。

本記事では、ワット・プラシンの歴史や境内の見どころ、アクセス情報を在住者目線でわかりやすく解説します。

💡 編集注:本記事は2019年に初公開した内容を、現地取材にもとづき2025年9月に全面リライトしました。現在の参拝ルートや最新情報を反映しています。

ワット・プラシンの歴史

ワットプラシンにたっているランナー王朝の創始者マンラーイ王とランナー王朝5代目パーユー王の記念碑
ワットプラシンを建てたパーユー王(右)

ワット・プラシンの創建は14世紀半ばにさかのぼります。

ランナー王朝第5代パーユー王は、1345年に父カムフー王が亡くなると、スアンドーク門近くに仏塔を建てて遺骨を納め、本堂・布薩堂・ライカム堂を造立しました。これが寺院の始まりと伝えられています。

当初、この寺院は境内前にあった青空市場「リーチェン市場」にちなみ「ワット・リーチェン」と呼ばれていました。

その後、1400年頃、ランナー第7代セーンムアンマー王の治世に「ヒシン仏(プラ・シン)」がワット・リーチェンに安置されると、守護仏の名が広まり、寺院は「ワット・プラシン」と呼ばれるようになりました。

1940年11月30日、チャクリー王朝第8代ラーマ8世(アーナンタマヒドン国王)の勅命により、第一級王室寺院の格が与えられ、正式名称「ワット・プラシン・ウォーラ・マハーウィハーン」となりました。

こうして創建から現在に至るまで、ワット・プラシンはチェンマイを代表する寺院として信仰を集め続けています。

境内に残るカムフー王の供養塔。創建当初、ここに父王の遺骨が納められた
境内に残るカムフー王の供養塔。創建当初、ここに父王の遺骨が納められた

境内の見どころ

大本堂(ウィハーン・ルアン)の前には、境内の主な建物を紹介したワット・プラシンのガイドパネルがあります。

本記事では、その中から特に見どころとなる場所を、歴史を交えながら入口から順番に案内していきます。

高僧クルーバー・シーウィチャイ像

ワット・プラシンの境内で最初に出迎える高僧クルーバー・シーウィチャイの像です
ワット・プラシンの境内で最初に出迎える高僧クルーバー・シーウィチャイ像

正門をくぐって境内に入ると、まず目に入るのが高僧クルーバー・シーウィチャイの像です。

師は北タイの寺院復興に尽力し、“北タイの聖人”とも呼ばれる存在。

1924〜1925年にはワット・プラシンの大本堂、1926年には仏塔の修繕を手がけました。

ホートライ(経堂)

ワットプラシンのホートライの壁の漆喰つくりの天女
ワットプラシンのホートライの壁の漆喰つくりの天女

クルーバー・シーウィチャイ像の右手には、経典を納めるための建物ホートライ(経堂)があります。公式の順路では最初に目に入りますが、多くの観光客は大本堂や仏塔を回ったあと、最後にゆっくり見学しています。

このホートライは、歴史的価値と芸術的価値を兼ね備えた美しい建築物として知られています。1816年、チェンマイ王朝(復興ランナー王朝)初代カーウィラ王によって建立されました。

建物は二階建てで、一階部分の壁には漆喰で作られた16体の天女像が並び、二階の木造部分には漆塗りの上に金箔で文様が施されています。

大本堂(ウィハーン・ルアン)

ワットプラシンのランナー建築様式の大本堂の入り口を護る二匹のナーガ
大本堂の入り口を護る二匹のナーガ

正面にそびえる大本堂は、幅24m・奥行46mを誇るランナー建築様式の建物です。

屋根はチーク材に瓦葺きで、頂部には神聖な棟飾り「チョーファー」が据えられています。

破風に施された装飾も神々しく、外観からして格式の高さが漂います。

1924〜1925年には高僧クルーバー・シーウィチャイやダラーラッサミー王妃の手により修復が行われ、さらに1986年6月12日には当時のワチラロンコン皇太子(現・ラーマ10世)を迎えてチョーファーの上棟儀式が執り行われました。

現在は本堂脇にチケット窓口が設けられており、内部拝観は有料(50バーツ)。

ワットプラシンの大本堂に祀られているプラ・シー・サンペット仏(別名ルアン・ポー・トー)
ワットプラシンの大本堂に祀られているプラ・シー・サンペット仏(別名ルアン・ポー・トー)

堂内には「プラ・シー・サンペット」と呼ばれる大仏(別名ルアン・ポー・トー)が祀られており、かつてこの寺院の本尊とされていたと伝えられます。

荘厳な空間で、地元の参拝者が熱心に祈りを捧げる姿も印象的です。

なお、大本堂に入る際は露出の多い服装は避けましょう。サンダルでの参拝は問題ありません。

布薩堂(プラ・ウボーソット・ソーンソン)

ワット・プラシンならではの建築様式を持つ布薩堂「プラ・ウボーソット・ソーンソン」の外観
ワット・プラシンならではの建築様式を持つ布薩堂「プラ・ウボーソット・ソーンソン

大本堂の裏手には、ワット・プラシンならではの建築様式を持つ布薩堂「プラ・ウボーソット・ソーンソン」があります。

「ソーンソン」とはタイ語で「二人の僧」という意味。

堂内中央に置かれたモンドップ(小堂状の尖塔)によって南北に分け、比丘(僧)と比丘尼(尼僧)など、男女の修行者が同席しないよう配慮されたと考えられています。

このような構造は他寺院では珍しく、ワット・プラシンの布薩堂が特別視される理由のひとつです。

*通常布薩堂は非公開ですが、ここでは参拝できるのが特徴です。

ウボーソット・ソーンソン内中央に置かれたモンドップ(小堂状の尖塔)
布薩堂中央に置かれたモンドップ(小堂状の尖塔)

モンドップの上には「プラジャオ・トーンティプ」と呼ばれる仏像のレプリカが祀られています。

ランナー王朝第9代ティローカラート王が造らせたとされ、プラ・シンに似た姿を持ちます。

本物は台座に宝石が散りばめられており、特別な尊さを感じさせます。

プラジャオトーンティップはランナー王朝9代目ティローク王(ティローカラート王)が作らせたプラシン像に良く似た仏像で台座には宝石が散りばめられています。

仏塔(プラマハージェディー)

ワットプラシンの仏塔(プラマハージェディー)辰年の仏塔でもある
ワットプラシンの仏塔(プラマハージェディー)辰年の仏塔でもある

布薩堂の裏には、黄金に輝く「プラ・マハー・チェディー(仏塔)」がそびえています。高さは約50メートル、基壇の一辺は約32.5メートルあり、境内でもひときわ目を引く存在です。

十二支仏塔のひとつ↗️で、辰年生まれの人が参拝すると特に大きなご利益を授かれると信じられています。大仏塔の周囲にはさらに3基の小仏塔が配置されており、全体として調和の取れた景観をつくり出しています。

創建は1345年、ランナー王朝第5代パーユー王の時代にまでさかのぼります。

その後、1558年から1774年にかけてチェンマイがビルマの支配下に置かれると、寺院は荒廃し、仏塔も長らく放置されました。

1926年になって、チェンマイ王朝第9代ケーオ・ナワラット王やダーラーラッサミー王女、高僧クルーバー・シーウィチャイらの尽力により大規模な修復が行われ、現在見られる壮大な姿へとよみがえりました。

ラーイカム堂(ウィハーン・ライカム/プラ・シン像)

プラ・シン像が安置されているラーイカム堂の外観
プラ・シン像が安置されているラーイカム堂の外観

仏塔(プラマハージェディー)の左には、小本堂「ウィハーン・ライカム」があります。

ワットプラシンのラーイカム堂に安置されているシヒン仏
ワットプラシンのラーイカム堂に安置されているシヒン仏

ここにはチェンマイの守護仏のひとつ、プラ・シン仏像が安置されています。仏像の大きさは高さ79センチ、幅63センチほどで、堂内中央に鎮座しています。

伝承によれば、この仏像は2世紀頃、スリランカで3人の王と20人の阿羅漢によって鋳造されたとされます。

霊験あらたかな仏像としてスコータイからカンペーンペット、さらにチェンライへと、時の権力者の手を渡り歩きました。

チェンマイに運ばれたのはランナー王朝第7代セーンムアンマー王の時代で、チェンライ征服の際にエメラルド仏とともに持ち帰られたと伝えられています。

「シン(シヒン)」とは「獅子」を意味し、毎年ソンクラーンの時期にはご開帳され、神輿にのせられて街を練り歩く姿を見ることができます。

ワットプラシンのラーイカム堂内の壁に描かれてい壁画
ワットプラシンのラーイカム堂内の壁に描かれてい壁画

堂内の壁には古い壁画が残されており、経年変化で剥離が進んでいますが、王朝時代の人々の暮らしや衣装を描いた美しい風俗画が今も見ることができます。

なお、ライカム堂の背後には「五重仏塔クーライ」と呼ばれる五つの尖塔をもつ仏塔があります。基壇の下には多くの宝物が埋められていると伝えられており、伝統的なランナー建築の一例として知られています。大きな見どころではありませんが、時間があれば立ち寄ってみると良いでしょう。

プラウィハーン・プラノーン(涅槃像)

ワットプラシンのウィハーンプラノーンに安置されているサイヤート仏(涅槃像)
ワットプラシンのウィハーンプラノーンに安置されているサイヤート仏

ライカム堂の右手には、サイヤートと呼ばれる涅槃仏が安置されています。頭を北に、お顔を西に向けて横たわる姿は、他の見どころに比べるとあまり目立ちません。

しかし、その穏やかな表情には心を落ち着ける力があり、個人的には「せっかくここまで来たのならお顔を拝んでみてほしい」と思います。観光客も少なく静かに手を合わせられる、ちょっとした穴場のような場所です。

境内の雰囲気

ライトアップされたワットプラシン 左からラーイカム堂・仏塔・布薩堂
ライトアップされたワットプラシン 左からラーイカム堂・仏塔・布薩堂

ワット・プラシンは、チェンマイでもっとも格式の高い寺院だけに、他の寺院よりも参拝者が多く常に活気があります。

昼の参拝もいいですが、夜になると境内がライトアップされ、幻想的な雰囲気に包まれます。特に黄金の仏塔や大本堂が光に照らされる姿は美しく、インスタ映えを狙うなら日没後の18時ごろがベストタイムです。

さらに、日曜日の夜には境内前のラーチャダムヌン通りがサンデーマーケットの会場となり、参拝と合わせて楽しめるのも魅力。

ターペー門側とは反対の終点にあたるため、人混みを避けつつゆっくり散策できます。入口にはソンテウやトゥクトゥクが並び、参拝後も人の行き来で賑わっています。

アクセス・周辺情報

ワット・プラシンは、チェンマイ旧市街の中央を東西に貫くラチャダムヌン通り沿いにあり、徒歩でもアクセスしやすい立地です。旧市街観光の中心に位置するため、観光の拠点にもぴったりです。

最寄りバス停:ワット・プラシン(🟡24R/🔴24L)徒歩約1分 RTCスマートバス(50B) でアクセス可能です。 📍地図で見る

周辺の観光スポットでは、徒歩数分の場所にある ワット・チェディ・ルアン と、人気カフェ アカアマコーヒー本店(プラシン店) をセットで訪れるのが定番コースです。参拝後に美味しいコーヒーでひと息つけば、旧市街観光がさらに充実します。

まとめ

ワット・プラシンは、チェンマイ旧市街でもっとも格式が高く、第一級王室寺院として今も信仰を集める特別な存在です。

入口のクルーバー・シーウィチャイ像に始まり、壮麗な大本堂、独自の構造をもつ布薩堂、黄金に輝く仏塔、そしてチェンマイの守護仏プラ・シン像まで、見どころがぎゅっと詰まっています。

夜にはライトアップで幻想的な雰囲気が広がり、サンデーマーケットと合わせて訪れれば昼も夜も楽しめるでしょう。

「チェンマイを訪れるなら必ず参拝しておきたい寺院」と胸を張っておすすめできるのが、ワット・プラシンです。

関連記事

基本情報

正式名称ワット・プラシン・ウォーラ・マハーウィハーン
タイ語名วัดพระสิงห์วรมหาวิหาร
英語名Wat Phra Singh
営業時間9時00分~20時00分
地図Googleマップでひらく
連絡先053-416027
寺格ウォーラ・マハーウィハーン
十二支仏塔
入場料50バーツ
服装格式の高い寺院のため露出は控える。サンダル可
見どころヒシン仏・干支仏塔・布薩堂・経堂

 

筆者:HIRO@CHIANGMAI43(2012–2023チェンマイ在住/現・往復取材)
制度・料金は変更の可能性があります。最終確認は公式情報をご参照ください。